アーユルヴェーダでは食事は治療の一環として考えます。薬のように少量で効果的に働くものではありませんが、食べた内容や食事のとり方によって、心身にとても影響を与えるものだからです。

食事から得られる栄養は細胞のもとになります。体を構成する細胞は日々少しずつ入れ替わり、1年後にはほとんどの細胞が入れ替ります。体を維持するために食事は大切な役割があるのです。

また、現代医学でもいわれるように、アーユルヴェーダでは食事が人の生理機能に密接な影響を持っていると強調しています。食べた内容によって体の働きが変わり、体だけでなく心にも影響を及ぼします。

毎日の食事に気を使うことは、忙しい日々を過ごしていると時に難しいこともあります。ですが、体への食事の影響を考えると、食事について丁寧に考えてあげる必要性に気づきます。

アーユルヴェーダの食事の考え方


アーユルヴェーダでは食事を考えるときに

  • 食事そのものの内容
  • 食事のとり方

この2つを考えます。

アーユルヴェーダでは、食事の内容としてすべての人に有益な食品は何かということや、食品をよりよくとる(調理・食べ合わせ・慣れなど)こと、年齢や体質などを考えて心身のバランスを乱さないためにはどのような物を選ぶべきか、などについて紹介されています。

食事の内容が良質であるということはもちろん大切なのですが、今回はどんな年齢や体質の人でも変わりなくすすめられる「食事のとり方」についてご紹介します。

健康的な食事を気にかけている方でも、内容は意識的に選んでいるが、食べ方はあまり気にしていないということも多いのではないでしょうか?ですが、食べ方もとても重要なのです。内容の素晴らしい食事を食べていたとしても、適切に、または心地よく食べないことで消化力は落ちてしまいます。その結果、本来受け取れるはずの栄養をしっかり吸収できなくなってしまうだけでなく、消化不良から病気のもと(アーマ)を作ってしまうとアーユルヴェーダでは考えられています。

そのため、食事の内容だけではなく、食べ方もしっかり気をつける必要があります。また、よいといわれる食品を選択することは、経済的な理由や生活スタイルなど、さまざまな理由から難しいということもあります。そのような場合でも、食べ方を少し工夫することで豊かな食事にすることは可能です。

アーユルヴェーダの8つの食事のとり方


では、アーユルヴェーダでは8つの食事のとり方についてご紹介します。

  • 規則正しく同じ時間に食べる
  • 適量食べる
  • 空腹を感じてから食べる
  • 温かいものを食べる
  • 適度なスピードで食べる
  • 喋らず心を込めて食べる
  • 好きなもの、好きな場所で食べる
  • 満足感が最も大事

上記の8つになります。

それぞれについて、少し詳しく説明します。

規則正しく同じ時間に食事をとる

規則正しく食事を取っている人は、消化の問題が起こりづらいようです。同じ時間に食べる習慣があることで、体がそのリズムを覚えるのです。
食事や睡眠などはホメオスタシスという体のリズムによって調整されています。ですので食事や睡眠の時間を一定にすることは消化機能や代謝の乱れだけでなく、生理機能全体に影響を及ぼします。長く続けることで心身の健康へのよい影響があります。

適量を食べる

アーユルヴェーダでは腹3/4(内2/4が個体、1/4が液体、1/4空ける)を適量と考えます。消化に重い食事の場合は半分にとどめた方がよいともいわれます。

人によって適量は変わってきますが、アーユルヴェーダでいわれる適量とは「つぎの食事までに無理なく消化される量」になります。
お腹に重苦しさを感じず、また食後つぎの行動に気持ちよく移れるという状態が望ましいです。常にちょうどよい食事量を気をつけてあげることで、消化力を高めることができます。

空腹を感じてから食べる

空腹を感じるというのはそのまえの食事が消化され、食べる準備が整ったという合図になります。空腹を感じられない場合は、まだお腹に消化できていないものが残っているということです。その状態で食べてしまうと体のバランス(3つのドーシャの働き)が乱れ、消化力も落ちてしまいます。
時間だから、誘われたから、おいしそうなものがあるから、などの理由で無理やり食べてしまうのはやめましょう。

望ましい食事のサイクル

そのほか、以下も参考にしてください。

  • 食べたものは常にしっかり消化される。
  • つぎの食事のときには空腹を感じる。
  • 毎回の食事が美味しく感じられる。
  • 食後に不快感を感じない。

温かいものを食べる

作りたての自宅で食べるご飯は消化しやすいけれど、外で買ってきたご飯を食べるとお腹が重い。そのような経験はありませんか?アーユルヴェーダでは作りたての食事は消化しやすいといい、逆に調理後時間が経ってしまったものは腹部膨満感や腹痛の原因になるといわれています。

特に精神の向上を求める人は、調理後3時間過ぎてしまったものは精神によくない影響があるとされ、食べない方がよいといわれています。

適度なスピードで食べる

食事のスピードが早いとしっかり噛むことができません。そうすると消化吸収に問題がでてしまいます。また、飲み込むように食べていては、おいしさや満足を感じることもできません。五感をしっかり使い食事を楽しめる余裕が必要です。ですが、あまりだらだらと食べることもよくないといわれます。それは食べたものの時差により消化にばらつきが出てしまうからです。

アーユルヴェーダでは一回の食事を20分ぐらいで食べることをすすめています。

喋らず心を込めて食べる

集中し心を込めて食べることで五感が活性化され、見た目や香り素材のおいしさなどを味わう余裕が生まれます。感謝し、心地よさを感じながら食べる食事は、消化機能を高め、心身の働きも高めてくれます。

好きなもの、好きな場所で食べる

落ち着いた気持ちで喜びを感じながら食べるために、場所や食器、道具に気を使うこともアーユルヴェーダではすすめられています。
怒り・悲しみなど精神状態がよくないと消化機能は乱れてしまいます。このような精神状態のときに無理に食事をすることは、代謝経路を閉塞し、病気を招くと考えます。

意識的に心地よく演出して楽しく食事をとることは、消化機能を高めるためにとても大切なことなのです。

満足感が最も大事

食事において最も大事なことは満足を得るということです。食事の内容がいくらよいとしても満足のできない食事であれば、体や心への栄養は本来あるものより減ってしまいます。 満足という状態がとても重要なのは、それによって体の機能が上がるだけでなく、心も豊かにしてくれるからです。

一生のうちにどのくらい食事をするかわかりませんが、三食を一年と考えても1.080食となります。1年のうち何回満足に食事ができたか、またはできなかったかで心身の健康への影響は大きいと考えられます。

ただし、満足するからといって体に不適切なものを長く取り続けることもよいわけではありません。自身の体質にあった健康によい食事をおいしく満足しながら食べるということが理想です。

消化力を高める食事

上記にあげた8つの食事のとり方は、どれも消化力を落とさないということを目的としています。アーユルヴェーダでは消化力の乱れから未消化物(アーマ)が作られることで病気になると考えられているからです。
消化力の働きが高まることで、食べたものの代謝がしっかり行われ、心身の調子を高めてくれます。

補助的に消化力を高めるものとして

    • 食前15分前に生姜のスライスにレモン汁と岩塩をふりかけたものを食べる

    • 食後お白湯を少しづつ飲む

などあります。

食事瞑想のすすめ


先に紹介したように、アーユルヴェーダでは上記のような食事のとり方をすすめています。喋らずに心を込めて五感をしっかり使って食事をすることを「食事瞑想」といいます。

まずは毎日が難しい場合、週に1回など日にちを決めて「食事瞑想の日」としてもいいかもしれません。

無言で丁寧に食事をするということに取り組んでみるとわかると思いますが、普段いかに食べるという行為をいい加減に行なっているかに気づくことができます。
また、それだけではなく、食事の中にある見た目や味、香りなど、さまざまな感覚的刺激があることに気づきます。

食事瞑想で意識的に感覚を使い五感を活性化しクリアにすることで、今まで以上に素材のおいしさや食事に対する喜び、満足を得ることができます。
また、丁寧にゆったりとした気持ちで食事をすることが習慣にできれば、そこから余裕が生まれ、穏やかな気持ちで生活することを手伝ってくれます。

アーユルヴェーダの食事のとり方まとめ


人間の体は60兆の細胞でできているといわれています。それら細胞は古くなったら消滅し、そして代わりに新しい細胞が常に生まれています。一見すると安定している私たちの体ですが、常に入れ替わり続けているのです。それらを支え、維持している食事が明日の私たちの体を作っていきます。そう考えると、食事というものの大切さがよくわかり、食事について考えることの重要性を知ることができます。

ですが、反面「あれがいけない、これがいけない」と正しさにとらわれ過ぎると、喜びや満足感が薄れ、体の状態を理解することを難しくさせます。正しい知識を持ちながら、実際に食事をした結果、満足感や軽快感が得られているか、自己チェックすることが大切です。

食事は生きていく上で必要不可欠なものになります。私たちと食べ物の関わり方を考え、丁寧に暮らしていくことは人生を豊かなものにしてくれるでしょう。

 

参考資料
アーユルヴェーダ食事法  香取薫・佐藤真紀子 著
インドの生命科学 アーユルヴェーダ 上馬場和夫・西川真知子 著


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