ポカポカ温かくなってくると、心がウキウキと軽くなります。
辺りを見渡せば、樹木の新芽、道端の草、空の表情など、至る所に春を感じることができます。
そんな陽気とは裏腹に、鼻水、鼻づまり、目の痒み、体中から粘液が溢れ出ているような、花粉症に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。私たちの体の中でも、自然界と同じように春に向けて変化してきています。それが、「花粉症」という症状としてのあらわれでもあります。
アーユルヴェーダの教えから、この季節を気持ちよく過ごす智慧を、暮らしに取り入れてみましょう。
アーユルヴェーダ的暮らし
アーユルヴェーダは、約5000年前にインドに発祥したと言われる伝統医学です。世界三大伝統医学のひとつでもあり、「医学の母」ともいわれています。
インド、スリランカ、ネパール等の国々で、現在でも現代医学とともに人々の健康を支えています。
アーユルヴェーダという言葉は、アーユス(寿命/生命)とヴェーダ(知識/真理)という単語から成り、「寿命科学」「生命の科学」と訳されています。健康な人の健康を守り、病気の人の病気を治療すること。
これが、アーユルヴェーダの目的です。
そのために、食事、睡眠、運動などの生活習慣や、ハーブ療法などによって、病気を治療し、予防します。それだけはなく、よりよい人生をその人らしく、健康で美しく長生きする教えが説かれています。医学の範疇を超え、哲学や食事、生活習慣など、日常生活の中に取り入れられる智慧がたくさんあります。(参考記事:アーユルヴェーダとは)
なかでも食事、生活習慣はとても大切です。「季節に応じた食事や生活習慣を知り、それを実践する人は、体力が増し、肌艶がよくなる」といわれています。
今回は、アーユルベーダ的暮らし方として、「春の過ごし方」についてご紹介します。寒い冬の間に、力強く膨らんできた植物がパッと花咲くこの時期は、花粉症到来の時期となります。春におすすめの食事の方法や食材を取り入れたり、以下の方法を実践したりして、花粉症セルフケア方法としてお役立てください。
花粉症はデトックス
冬の間にカパドーシャが体に蓄積されます(冬の間に「重たい」「冷たい」というような性質のカパドーシャが体に蓄積されます)。春の温かい太陽光線で、冷え固まっていたカパドーシャが溶け出します。その溶けたカパドーシャは、粘液という形で体のいたるところで分泌されます。それが、くしゃみ、鼻水、涙目などの花粉症の症状としてあらわれます。
花粉症はいわゆるカパドーシャの毒だしなので、喜ぶべきことなのかもしれません。
なので、実はアーユルヴェーダ的花粉症対策としては、冬の暮らし方がポイントだったということになります。では、もう遅いのかというとそうではありません。症状が出てからのアーユルヴェーダ的対処法もありますので、ご紹介します。
鼻うがい(ジャラ・ネーティ)、ごま油の点鼻(ナスヤ)などの鼻のケアは、花粉症予防と症状軽減にとても効果的な浄化方法としてアーユルヴェーダでは取り入れられています。「鼻は脳への入り口」といわれています。鼻のケアをすることで、頭痛、視力改善、認知症予防、集中力・記憶力アップにもつながるとされています。どちらも台所にあるものですぐに実行できますので以下を参考にしてみてください。
花粉症対策に役立つアーユルヴェーダのセルフケア方法
鼻うがい(ジャラ・ネーティ)の仕方
著者撮影
【材料】
塩、ぬるま湯、コップ
- コップにぬるま湯1杯+塩小さじ1程度の塩湯を作る(塩分0.9%くらい)
- 片方の鼻穴を塞ぎ、空いている鼻穴で塩湯を吸う。
- 自然と口腔内におりてきた塩湯を吐き出す。
※コツは「勇気」を持つこと。
ごま油の点鼻(ナスヤ)の仕方
著者撮影
【材料】
太白ごま油
- 上を向き(寝転んでもいい)鼻孔を上に向ける。
- ごま油を2滴ずつ両鼻孔に垂らす。
- 尾翼(びよく)を人差し指と親指で挟み、スース―と息を吸いながら鼻の奥まで油を吸い込む。
- 喉の奥に油が出てきたら吐き出す。
- 心地よい温度のお湯でうがいをする。
※綿棒にごま油をつけて、鼻孔内に塗る方法でもよい。
※インドでは、小指の先にごま油をつけて鼻孔内に塗ることある。
アーユルヴェーダでは、この方法は花粉症の症状を軽減や鼻のケアに大変有効とされていますが、初めての方や不安な方はアーユルヴェーダの専門家や医師のアドバイスのもと行うことをおすすめします。合わないと感じた場合は、すぐに止めてください。
花粉症対策・セルフケアとしては、日常的には食事の取り方や春におすすめの食材、スパイスを活用することもアーユルヴェーダ的春の過ごし方ではおすすめです。ぜひ、参考にしてみてください。(参考記事:アーユルヴェーダ的春の過ごし方と食事方法)
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参考資料:
VB.アタヴァレー著/稲村晃江訳(1987.7.20)『アーユルヴェーダ 日常と季節の過ごし方』平河出版社
上馬場和夫/西川眞知子著(2002.5.10)『インドの生命の化学アーユルヴェーダ』農山漁村文化協会
香取薫/佐藤真紀子著(2014.10.3)『アーユルヴェーダ食事法 理論とレシピ』径書房
デイビット・フローリー、ヴァサント・ラッド著/上馬場和夫訳(2000.5.1)『アーユルヴェーダのハーブ医学』出帆新社
管理栄養士。アーユルヴェーダ料理教室SpiceSpice主宰。バックパッカー時代、インドで体調を整えるスパイス料理に魅了され定期的に渡印。ホームステイにこだわり、心温かい家庭料理を習う。香りや味で料理をおいしくするスパイスのように、日常の暮らしを豊かにする、スパイスのような智慧と経験を味わう教室を目指している。
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