アーユルヴェーダでは、「消化力」が健康の重要な要を握っていると考えています。
消化不良や食欲減退、何だかやる気が出ないと感じている方は、「消化力の低下」が原因かもしれません。消化の仕組みを知り、消化力を高める食べ方を参考にしてみてください。
消化の仕組み
私たちが食べた食物は、消化機能により消化され、小腸で栄養が吸収され、やがて排泄されます。食べ物を食べる目的の1つは栄養摂取です。栄養は小腸で吸収されてはじめて栄養を摂取したことになります。そのため、飲み込んだだけではまだ栄養にはなっていません。
吸収された栄養はどのように私たちの体を作っているのかをみていきます。
- 口
食べ物を口に入れて嚙み砕き、唾液が分泌され、飲み込みやすい形にして飲み込む。
ここから消化が始まります。 - 胃
酸性の胃液が分泌され、食べ物をどろどろの粥状へと変化させます。食物の胃の滞在時間は、食べたものによりますが食事から1時間~3時間程度といわれています。 - 十二指腸
肝臓や膵臓から消化液等が分泌され、さらに消化が進みます。 - 小腸
体の中で一番長い臓器である小腸では、無数にある柔毛から栄養素が吸収されます。 - 大腸
水分の吸収と便の形成が行われます。 - 肛門
便の排泄。
このような流れで、食物は「消化→吸収→排泄」へと流れていきます。
先述したとおり、食物の栄養は小腸で吸収されることで体に取り入れたことになります。食べ物を小腸で吸収できる形である栄養素へと変化させるのが消化酵素で、これが消化の火「アグニ」の働きです。
つぎに吸収された栄養素の行方をみていきましょう。
体内での栄養素の行方
小腸から吸収された栄養素は、毛細血管より肝臓に運ばれます。肝臓は栄養の貯蔵をしている臓器なので、肝臓が栄養の宝庫といわれるのはこのためです。
そして、肝臓から栄養満点の血液が心臓に運ばれ、心臓のポンプで送り出された血液は体の隅々まで栄養を行き渡らせます。そこで新陳代謝が行われ、新しい細胞が作られ、古い不要なものは老廃物となり血液によって運ばれその後、腎臓で濾過されます。
このように、必要なものは体内に再吸収され、不必要なものは尿として体外に排泄されます。
消化の重要性
このように見ていくと、食べ物の消化がいかに大切なのか分かります。アグニの力できちんと消化されたものが栄養素となり吸収されます。
消化されなかったものは、アーマ(未消化物)となり、さまざまな体調不良の原因になってしまいます。このため、アーユルヴェーダではきちんと消化されることを重要視しているのです。
消化力を高めるには
消化力を高めるには、食事法、生活法などいくつもの方法があります。中でも、おすすめなのは「お腹が空くまで食べないこと」で、いわゆる「断食」です。
現代の日本は、スーパーやコンビニで食べ物をいつでも手に入れることができ、時間になったら空腹でなくても食事をするといった傾向にあります。
最近では、リモートワークや休日も外出を控えたりなどで身体を動かす機会が減り、空腹を感じにくい生活を送っている人もいるでしょう。何日も断食をするのではなく、夕食のみ抜いてみたり、食べる量を腹八分にしたり、間食を省いてみると、体が軽くなり空腹感を感じることができます。
消化促進におすすめのレシピ
消化を促進する=アグニの力を強める食事をご紹介します。
アーユルヴェーディックラッシー
ヨーグルトを水で攪拌して作るアーユルヴェーディックラッシーは、なんと消化促進作用があります。
著者撮影
【材料(2人分)】
- プレーンヨーグルト 100ml
- 水 200ml~300ml
【作り方】
- ボールにヨーグルトを入れて、泡だて器でよく混ぜる。
- 水を少しずつ加えながら、よく攪拌して混ぜ合わせる。
※ブレンダーを使うと簡単に綺麗に作ることができます。
※お好みで蜂蜜、砂糖、塩など加えてお楽しみください。
生姜のレモン漬け
食前に食べると消化の火を燃え立たせ、食事の消化をサポートします。
【材料】
- 生姜スライス 適量
- 岩塩 少々
- レモン汁 少々
【作り方】
- 生姜のスライスに岩塩とレモン汁をふりかける。
トリカトゥ
3種の辛味スパイスをブレンドしたMIXスパイスです。アグニ(消化の火)を強め代謝を促し、体内に溜まったアーマ(未消化物)をしっかりと排出してくれます。
【材料】
- ジンジャーパウダー
- ブラックペッパーパウダー
- ピッパリーパウダー(ロングペッパーパウダー)
【作り方】
- 材料のスパイスを同量混ぜ合わせる。
※ピッパリーは沖縄産のヒハツ(ヒバーチ)でも代用できます。
【飲み方】
- お湯コップ一杯にトリカトゥ小さじ1杯程度を溶かして飲む。
ジャガリー(黒糖)を加えてもOK - トリカトゥと非加熱の蜂蜜を混ぜて舐める。
その他トリカトゥを使ったレシピはこちら↓
2021.04.21
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食事において大切なことは、「満足感と幸福感を得ること」です。満腹感ではありません。
お腹いっぱいに食べると、その時は幸せに感じるかもしれません。しかし、食べすぎてしまった後悔、お腹が張って苦しくなったり、食べ過ぎによる体調不良という弊害を起こしかねません。そのためにも腹八分で留め、ちょうどいい量を食べるようにしましょう。
また、幸福感はどんなときに感じられますか。おいしい食事を食べたとき、大切な家族や仲間と過ごす時間や、平和に過ごすことができていること、食べ物があること、雨風をしのげる家があること、今生きているということ、当たりまえと感じられることが、実はとても幸福なことなのです。
このような感謝の気持ちを持って食事をすると、食べたものがより効率的に消化され健康的な体へと導いてくれるとアーユルヴェーダは教えています。
参考資料:
VB.アタヴァレー著/稲村晃江訳(1987.7.20)『アーユルヴェーダ 日常と季節の過ごし方』平河出版社
上馬場和夫/西川眞知子著(2002.5.10)『インドの生命の化学アーユルヴェーダ』農山漁村文化協会
香取薫/佐藤真紀子著(2014.10.3)『アーユルヴェーダ食事法 理論とレシピ』径書房
管理栄養士。アーユルヴェーダ料理教室SpiceSpice主宰。バックパッカー時代、インドで体調を整えるスパイス料理に魅了され定期的に渡印。ホームステイにこだわり、心温かい家庭料理を習う。香りや味で料理をおいしくするスパイスのように、日常の暮らしを豊かにする、スパイスのような智慧と経験を味わう教室を目指している。
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