12月になると冬らしい寒い日が続きます。
冬は最も体力・消化力も高まる季節ですが、その反面、暴飲暴食や寒さと乾燥により体調を崩しやすい季節でもあります。冬の過ごし方が、春を気持ちよく迎えられるかどうかにもつながってきます。
日本ではオイルマッサージのイメージが強いアーユルヴェーダですが、健康に生きていくための日々の過ごし方や食事の仕方や取り入れ方についてもたくさんの知恵が蓄積されています。
アーユルヴェーダの知恵で冬を健康に乗り切る方法と、そのために効果的なジンジャーを使ったレシピを紹介しています。
冬にはどんなものをどのように食べたらよいの?
アーユルヴェーダでは、ヴァータ(風のエネルギー)、ピッタ(火のエネルギー)、カパ(水のエネルギー)という3つのエネルギーにより自然界が構成されていると考えられています。
北風が強まり気温が低く乾燥している冬は、風のエネルギーであるヴァータが増えてくる季節です。
私たち人間の体も、この3つのエネルギーのバランスによって成り立っており、そのバランスによって私たちの体質や性格の違いが出てくるとアーユルヴェーダでは考えられているのですが、このバランスはさまざまな要因により乱れることがあります。
冬は、乾燥して冷たいヴァータ(風のエネルギー)が増えるので、私たちの体にもヴァータのエネルギーが増えやすくなってきます。
アーユルヴェーダでは、増えている性質と反対の性質のものを摂るとよいとされているので、食事面ではしっとりしていて温かく、どっしりとしたものを摂るのがおすすめです。乾燥しているのである程度の油分も必要です。
生姜などの体を温めてくれるスパイスや食材を取り入れたり、温かいスープなどがおすすめです。
また、アーユルヴェーダでは、食べ物には6つの味があると考えられています。
6つの味(六味)とは、甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味のことです。そして、少しでもよいので、1回の食事でこの6つの味をすべて摂ることが大切だと考えられています。
ヴァータが増えているときには、甘味・酸味・塩味を多めに摂ることがおすすめです。この3つの味は、増えたヴァータを調和し下げてくれるからです。
では、この3つの味とは具体的にどんな食べ物のことを指すのでしょうか?
甘味・・・砂糖の甘味というよりは、米や小麦などの穀物などの甘味。または、調理したさつまいも、かぼちゃ、にんじん、ビーツなどの野菜、またレーズンやデーツなどのドライフルーツもあげられます。
酸味・・・レモンやゆず、カボス、グレープフルーツ、オレンジなどのフルーツ。
または、ヨーグルトやチーズなどの酸味のある乳製品。酢や漬物などの発酵させたもの。炭酸飲料など。
塩味・・・岩塩や海塩などの塩類の味。海塩は体を温めてくれます。
醤油や味噌などの調味料も塩味が含まれています。
以上から考えると、ヴァータの増えやすい冬には、具だくさんの温かい鍋にゆずやカボスを絞って食べたり、さつまいもやにんじんなどのシチューなどがおすすめです(ただし、乳製品と塩の組み合わせはアーユルヴェーダでは毒になると考えられているので豆乳など使い、作りましょう)。
体を温めてくれるスパイスを使ったカレーやスープもいいですね。反対に冷たい飲み物や食べ物はできるだけ避けましょう。
冬は、一年で最も体力や食欲、消化力が高まる時期ではありますが、食後に甘いものなどを食べ過ぎないようにしましょう。
冬を乗り切るジンジャーを使ったレシピ
寒く乾燥している冬の時期は、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすいシーズンでもあります。
日本では、風邪を引きそうなときにはショウガ湯を飲んだりします。このようにジンジャー(ショウガ)は日本でも昔から重宝されてきたスパイスのひとつですが、インド発祥のアーユルヴェーダでもジンジャーは重要なスパイスです。
アーユルヴェーダでは、ジンジャーは体を温めるだけではなく消化を促進し、免疫力を高める効果の期待できるスパイスといわれています。
我が家でも、家族や筆者自身が風邪を引きそうなときにはジンジャーはちみつレモンを飲みます。
ショウガをすりおろしてから、お湯を注ぎ、粗熱がとれたらレモン汁とはちみつを適量入れます。
アーユルヴェーダでは、はちみつを加熱すると毒(アーマ)となり体に蓄積されてしまうといわれているので、ある程度冷めてから入れてください。そして、非加熱のはちみつを使用してください。消化力・免疫力が下がっているときにおすすめの簡単ドリンクです。
ではここで、ジンジャーはちみつレモンよりも少し手間がかかりますが、保存の効く冬におすすめのジンジャーシロップのレシピを紹介します。
風邪を引いたときだけではなく、体が冷えて温めたいときにお湯で割ってホットジンジャードリンクにしたり、ちょっとしたおもてなしとして炭酸水で割ってジンジャーエールにすることもできます。
ただし、冷たいジンジャーエールは飲みすぎには注意してくださいね。
ピリリと辛口 大人のジンジャーシロップのレシピ
【材料】
- しょうが 100g
- 甜菜糖 60g(キビ砂糖、ココナッツシュガーなども可)
- 水 200cc
- 鷹の爪 1本
- シナモンスティック 1本(約5cm)
- スターアニス 1ケ
- クローブ 3粒
- ブラックペッパー 5粒
- 非加熱はちみつ 40g
【作り方】
- しょうがは2〜3mmの薄いスライスにする。
- しょうが、甜菜糖、水、スパイス類を鍋に入れ、火をつける。
- 沸騰したら弱火で20分程度火にかける。粗熱が取れたらはちみつを加えてよく混ぜる。
- 一晩おいておいたら完成。
スパイスは、温め効果の高いスパイスを選んでいます。お好みで入れてみてください。
煮出したあとのショウガは、おやつにかじっても美味しいですし、刻んでお料理に使うのもおすすめです。
ジンジャーをうまく取り入れて、この寒さを健康に乗り切りましょう。
ジンジャーに期待される効果
今では世界の多くの地域で食されているジンジャー。なんとコーランや中国の食事療法、そして中世ヨーロッパでも、その温める作用について言及されていたとか。
科名:ショウガ科
使用部位:根茎
原産地:熱帯アジア
和名:ショウガ(生姜)香り:根の香りと甘くスパイシーな香りを持つ。辛み成分であるショウガオールは、乾燥したり加熱したりすることで生成される。
●ジンジャーの作用
興奮・刺激、駆風、制吐、発汗、去痰、鎮痛など
●主な適用症
風邪、インフルエンザ、咳、息切れ、消化不良、嘔吐、ゲップ、腹痛、便秘、咽頭炎、関節炎、痔、頭痛、心臓病
ジンジャーには、生ショウガと乾燥させて粉末にしたジンジャーパウダーがあります。
どちらも消化吸収を促す作用があります。また、腸内ガスを消散させ、冷えによる月経時の腹痛にも効果的です。
パウダーのほうが強くて鋭い作用を持つため、ピッタ(火のエネルギー)が増加している方は生のほうがおすすめです。
また、ジンジャーの消化促進効果を生かした、「食前ショウガ」もおすすめ。
食前ショウガとは、ショウガをできるだけ薄くスライスし、塩、クミンシード、レモン汁を適量かけて10分ほど置いておいたもの。食前30分ほど前に2~3枚いただくと消化力がアップします。
こちらは季節にかかわらずおすすめです。
参考:
上馬場和夫(2010.9.25)『アーユルヴェーダ・カフェ』地球丸
日沼紀子(2014.2.27)『スパイス&ハーブ料理の発想と組み立て』誠文堂新光社
蓮村誠(2010.8.3)『究極のデトックスレシピ』PHP研究所
「アンドスパイス」代表
メーカーの営業職として忙しく働いていた頃、アーユルヴェーダの考えをベースにしたインド料理店の沁み渡るような優しい味に感動し、アーユルヴェーダスクールに通い始める。退職後、ベジタリアンレストラン、南インド料理店で勤務し、南インドカレー店「アンドスパイス」をスタート。不定期で料理教室も開催してる。
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