1月に入り寒い日が続いています。
日照時間が短くなって気温は下がり、空気は乾燥して風も冷たくなってきました。アーユルヴェーダでは、ヴァータという風の性質が増える季節です。
この寒さを乗り越えるために、私たちの消化力や体力は一年のうちで最も強くなります。
冷たく乾燥したこの季節には、温かく汁気のあるもの、また、油分を多く含む食べ物を十分な量食べる必要があります。
アーユルヴェーダの6味(甘、酸、塩、辛、苦、渋)の中では、「甘味、酸味、塩味」の味を多めに摂るのがおすすめです。甘味というのは、米や小麦、乳製品などのことです。ギーなどの油も使用しましょう。また、生姜やシナモンなどの温性(体を温めてくれる性質)のスパイスを使用するのもおすすめです。
アーユルヴェーダ的 冬におすすめのスパイスとその特徴
冬におすすめのスパイス① シナモン
科名:クスノキ科
原産地:スリランカ、南インド
和名:ニッケイ、ニッキ
作用:血液浄化作用、駆風作用、利尿作用、発汗作用、去痰作用、鎮痛作用
風邪やインフルエンザのときには発汗剤や去痰剤として働きます。また鎮痛作用があり、熱や歯痛を鎮めたり、筋肉の緊張を解く作用があります。毒素を浄化し、循環を助け、消化を促す効果が期待できます。
ホール(シナモンスティック)やパウダー状で使用されます。
冬におすすめのスパイス② ショウガ
科名:ショウガ科
原産地:熱帯アジア
和名:ショウガ
作用:駆風作用、制吐作用、発汗作用、去痰作用、鎮痛作用
食物の消化・促進を促すスパイスです。循環を促し、凝血を溶かし、心臓発作を予防します。風邪や咳が出るときに活躍します。
生のショウガのまま使う場合と乾燥させたジンジャーパウダーとして使う場合があります。
生よりもパウダーのほうが強く鋭い性質のため、ピッタが悪化*している人は生のショウガがおすすめです。
※ピッタが悪化とは、ピッタの性質が増え怒りっぽく攻撃的になったり、発疹や痒みなどの肌トラブルが起きたり、胃腸の病気になったりするなどの症状が現れるとき。
冬におすすめのスパイス③ ブラックペッパー
科名:コショウ科
使用部位:果実
原産地:インド南部
和名:黒胡椒
香り:刺激が強く爽やかな香味。辛味成分はベピリンと呼ばれるもの。
作用:去痰作用、駆風作用、解熱作用、駆虫作用
消化力をアップさせて、消化液の分泌を促し、食物の味をよくする効果もあります。
生の食物などを食べたときの解毒剤としても効果的です。ブラックペッパーパウダーをはちみつと一緒に摂ると去痰剤として働き、鼻汁を除去し粘液の分泌を抑える作用を期待できます。
スパイスを使った冬におすすめのレシピ
冬のおすすめレシピをお伝えします。
アーユルヴェーダ冬のおすすめレシピ① シナモンティー
筆者撮影
【材料(1人分)】
- シナモン 約6g(5cmの2本)
- 水 200cc
【作り方】
鍋にシナモンと水を入れ、沸騰したら弱火にして6〜7分煮出せばできあがり。
※余ったシナモンで数回煮出すことができます。
【ポイント】
砂糖を加えなくてもシナモン自体に甘味があります。ヴァータが増えているとき*におすすめの飲み物で、体を温めてくれるだけでなく、体の細胞を活性化させてくれます。
※ヴァータが増えているときとは、ヴァータの性質が増え精神的に不安定になったり、衝動的になったり、体が乾燥したりするとき。
アーユルヴェーダ冬のおすすめレシピ② リンゴのギーソテー
筆者撮影
【材料(2人分)】
- りんご 1/2個
- ギー 小さじ1
- ブラックペッパー 2粒
- くるみ 2個(あれば)
- レーズンや刻んだデーツ 10粒分(デーツなら1粒分)
- はちみつ(非加熱のもの) お好みで
【作り方】
- りんごは皮をむいて、16等分の串切りにする。
- ブラックペッパーは軽く砕いておく。
- フライパンにギーをしき、ブラックペッパーを入れて火を通す。
- りんごとくるみ、レーズンを加えて、りんごの両面に軽く焼き色がつくまで中弱火で焼く。
- お皿に盛り付けてできあがり。
もし甘さが足りなければ、お好みで非加熱のはちみつを加えてもよいですが、りんごを加熱することで甘みもぐっと増し、体も冷やさずに食べられます。
【ポイント】
刺激を減らしたい場合やお子様と食べる場合には、ブラックペッパーの代わりに、シナモンパウダーを仕上げに振ってもよいです。りんごを加熱することで甘みもぐっと増し、体も冷やさずに食べられます。
アーユルヴェーダ冬におすすめのレシピ③ 根菜たっぷりカレースープ
筆者撮影
【材料(4人分)】
- 植物油 大さじ2
- クミンシード 小さじ2
- しょうが ひとかけ(みじん切り)
- 玉ねぎ 1/2本(1㎝角切り)
- トマト 1/2個(ざく切り)
または、カットトマト缶 100cc - コリアンダーパウダー 小さじ2
- ターメリック 小さじ1
- にんじん 小1本(100g)(一口大にカット)
- れんこん 1節(150g)(一口大にカット)
- じゃがいも 小3個(150g)(一口大にカット)
- 水 600㏄
- 昆布またはだし昆布 1枚(10g)
- ブロッコリー 10房分(100g)(房に分けておく)
- ガラムマサラ 小さじ2~3
- 塩 小さじ1~2
- ギー 大さじ1
【作り方】
- しょうがはみじん切り、玉ねぎは1cm角、トマトはざく切り、にんじん、れんこん、じゃがいもは一口大にカットする。ブロッコリーは房に分けておく。
- 鍋に植物油、クミンシードを入れ火にかける。
- クミンシードから泡が出てよい香りがしたら、しょうがを入れ炒める。
- しょうがのよい香りがしたら玉ねぎを入れて炒める。
- 玉ねぎがしんなりしたらトマトを加え、温まったらコリアンダーパウダー、ターメリックを加える。
- スパイスがトマトにしっかり馴染んだら、にんじん、れんこん、じゃがいもを入れて軽く炒め、水と昆布を加えて弱中火で野菜にだいたい火が通るまで煮る。(8〜10分程度)
- ブロッコリーを加えて1分半程度煮る。
- ブロッコリーにも火が通ったら、塩とガラムマサラを加え、味を整える。最後にお好みでギーを加えてさらにコクを出す。
【ポイント】
旬の根菜をたくさん使うことで栄養もしっかり取れます。ショウガやガラムマサラで体を温めます。スパイスやギーのおかげで、コンソメなどの調味料がなくてもおいしく仕上がります。
アーユルヴェーダ冬のおすすめレシピ④ かぶのダルスープ
筆者撮影
【材料(4人分)】
- ムングダル(緑豆のひきわり) 1/2カップ
- ターメリック 小さじ1/4
- かぶ 1個分
- 塩 小さじ1
- ギー 大さじ2(なければバター)
- クミンシード 小さじ1
- ホールチリ 2本
- にんにく(みじん切り) 1かけ分
- 玉ねぎ(みじん切り) 1/4個分
- お好みでパクチー 適量(飾り用)
【作り方】
- ムングダルをよく洗い、鍋にダルを入れ、豆より2cm上くらいまで水を入れて強火にかける。灰汁が溢れないように注意しながら沸騰したら弱火にする。
- 弱火にしたら、ターメリックを加えて一緒に煮る。豆が指で簡単につぶれる程度まで(約30分程度)煮続ける。この時、水の量が減って煮詰まってきたら適宜差し水をする。
- 一口大にカットしたかぶを加えて火が通るまでさらに煮る。塩を加えて調味する。
- 小さなフライパンなどにギーを溶かし、クミンシードを入れ泡が出始めたらホールチリを入れ、いいや香りがしたらにんにくを加える。にんにくのツンとした香りが消え、香ばしい香りになったら、玉ねぎを加える。
- 玉ねぎが色づいていい香りがしてきたら、③のダルの鍋に油ごと投入する。
- 全体を混ぜて火にかけ5分程度煮る。⑤がなじんだら、塩味を調節して完成。
お好みでパクチーをふる。
【ポイント】
消化力が高まっているだけに食べ過ぎてしまうことも多い冬。胃腸が疲れ気味のときにはこのスープがおすすめです。
豆の中で最も消化しやすいといわれているムング豆に、こちらも消化に優しい旬のかぶを加えています。
上記、スパイスが合わないという方はお控えください。
参考資料:
上馬場和夫・香取薫(2010.9.25)『アーユルヴェーダ・カフェ』地球丸
蓮村誠(2010.8.3)『究極のデトックスレシピ』PHP研究所
日沼紀子(2014.2.27)『スパイス&ハーブ料理の発想と組み立て』誠文堂新光社
「アンドスパイス」代表
メーカーの営業職として忙しく働いていた頃、アーユルヴェーダの考えをベースにしたインド料理店の沁み渡るような優しい味に感動し、アーユルヴェーダスクールに通い始める。退職後、ベジタリアンレストラン、南インド料理店で勤務し、南インドカレー店「アンドスパイス」をスタート。不定期で料理教室も開催してる。
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