「教えて!佐野先生」では、アーユルヴェーダについて造詣の深い佐野正行医師(以下、「佐野先生」と呼ばせていただきます)にインタビューし、アーユルヴェーダを活用して毎日の生活をより健康的に過ごすヒントをご紹介しています。
第三回目は、夏バテしない体づくりや熱中症予防についてなど、アーユルヴェーダ的夏の養生法についてお話いただいています。今年は梅雨が長く、残暑も厳しいとの予報が出ています。また、新型コロナの流行もあり、今まで以上に健康に意識が高くなっています。
夏~秋を健やかに過ごすヒントとして、以下を参考に取り入れてみてください。
夏バテしない体づくり& 熱中症予防のケア についてお聞かせください。
この時期のアーユルヴェーダ的養生のポイントは3つあります。
①体を冷やさない
夏は体を外部と内部の両方から冷やしてしまいます。
暑いと冷房で体を冷やしますが、これが外部からの冷えです。そして、冷たい食べ物や飲み物をたくさん摂取してしまいがちなので、内部からも体を冷やしてしまいます。
体を冷やしすぎると消化管が疲れてしまうので免疫力が下がり、風邪を引いたり、ウィルスに感染したりしやすくなります。
また体が冷やされると、体温を維持するために、エネルギー(熱)をドンドン作り続けることが必要になる、つまりエネルギーを無駄に使うことになるので疲れてしまいます。
冷房の風が直接当たることも避けてください。
最初はとても気持ちがいいのですが、冷たい風がずっと体に当たると体から熱を奪われ続けます。すると、熱を作らなければならず、体は止まっているのに全力で走っているのと同じ状態になってしまい、体は疲れ切ってしまいます。
「冷たいものをできるだけ摂らない」ことを意識してください。
冷蔵庫から出した冷たい食べ物は少し室温に置いてから食べてください。
麦茶などの水分を摂るときも氷を入れないなど、できる工夫をしてみてください。
一番注意しないといけない飲み物はビールです。
ビールが好きな人は、2~3ℓは簡単に飲んでしまいますよね。キンキンに冷えた水分が3ℓも胃の中に入ると、胃腸が冷えてしまいまい、もとの体温まで戻すにはたくさんのエネルギーが必要になります。たくさんのエネルギーを作ると、胃腸以外の部分はむしろ暑くなってしまうので、さらに冷たい飲み物が飲みたくなってしまう…という悪循環にも陥ります。
また、冷たくて甘いアイスクリームも注意してください。
砂糖自体も体を冷やしてしまいますので…。
胃腸が冷えている女性は、子宮が冷えてホルモンバランスを崩したり、腸の蠕動運動が弱くなるので便秘になったりしやすくなります。
②温度差と温度変化に気を付ける
暑いところと寒いところでは、各々の場に適した状態なるよう自律神経が体を調整しています。
冷房の効いた部屋と暑い屋外の行き来が多くなると、自律神経が頻繁に働くことになります。そうなると、自律神経が疲れてきたり、環境の変化に自律神経が追いつけなくなったりして、自律神経がうまく働けなくなってしまいます。
冷房のきいた室内と屋外の移動を減らす、冷房をできるだけ使わずに窓を開けて外気と室内との温度差を少なくして過ごす、ということを意識してください。ですが猛暑のときなどは、エアコンを28度くらいに設定して体が冷えすぎないよう気を付けながら、熱中症対策を行うことも大切です。
冷房を使うときの温度設定は基本的には女性にあわせてください。
女性は筋肉が少なく、皮下脂肪が多いという体の特徴があるので、熱が上がりにくく冷えやすいため温度調整に時間がかかるからです。
熱を作る力も男性より弱いので、低い室温の所では、男性より女性のほうがとても疲れやすいです。
脂肪と筋肉が少ないやせ型の女性は、熱を作りにくく、熱を保持することができにくいので、体がとても冷えやすいです。より気をつけてください。
ノースリーブやスカートなどを着ている女性は、肌を露出する面積が広いので、熱を奪われやすい状態です。仕事をしているとき、自宅いるときは、羽織るものや膝掛けを必ず使って肌の露出面積を減らして、熱を奪われないようにしてください。
また、普段の生活も意識的に変えて、体に負担のかかりにくい生活を過ごしてください。
外出時間を午前中にしたり、風通しのよい自然が多いところでゆったり過ごしたりというように朝方・午前型の生活にします。冷房は最低限の温度設定にして冷やし過ぎないようにして、直接風が当たらないように工夫をすることも大切です。
私自身は、普段は冷房をできるだけ使わずに自然の風を取り入れながら過ごしています。
午前中の涼しいうちに頭使う作業を、午後は暑くても平気な仕事(ミーティングや単調な作業など)を行っています。
自分で温度調整することが難しい場合もありますので、寒い場所で羽織れる薄手の上着を一枚持って活動することをおすすめします。
この時期は自律神経のバランスが崩れやすい時期なので、「昼間は活動して夜は休む」といったメリハリを意識し習慣づけることが大切です。
ゆっくり深呼吸をすると自律神経が整いやすくなりますので、日常生活で意識的に深呼吸を行ったり、ヨガや瞑想を取り入れたりしてみてください。
③栄養バランスを考える
夏は塩分やミネラルが消費されがちで食事量も少なめになります。
「塩分やミネラルを意識的に摂る」「栄養バランスのよい食事をいただく」ことが大切です。
冷たいものを摂取して体を冷やすのではなく、食べ物での性質を利用して「自然に余分な熱をとる」ということも意識してください。
きゅうりやトマトなどの夏野菜や南国の果物を食べましょう。スイートコーン、オクラ、パセリ、なすなどもいいですね。
ビタミン・ミネラルも豊富なので、食べ過ぎないように、バランスよく取り入れてください。
食欲が低下する、栄養バランスを崩しやすい時期なので、サプリメントの摂取が必要な方もいます。
『冷たいものを食べる→胃腸が疲れる→冷える→胃腸のバランスが悪くなる→動かなくなる→食べられなくなる→栄養の状態が悪くなる→さらに動けなくなる』
という負の連鎖が起こらないように、消化のいいもの、体を温めるものをゆっくりよく噛んで食べてください。
私自身は、普段からコーヒーやハーブティーも温かいものを摂っています。
体のベースを整えて夏を乗り切りましょう
体調の不具合が出ないように普段から心身を整えることは、アーユルヴェーダ的にとても大切な考え方です。
人の体の状態は夏と冬では全く異なります。夏は熱が放散されやすく、冬は熱が放散されにくく、自律神経により調整されています。
「子どもは腹巻をしたほうがいい」とよくいわれますが、「夏に腹巻きをする」ことが大切です。
冬は寒いのでお腹を出すことはありませんが、夏は暑いのでお腹を出してしまいます。夏は熱を放散しやすくなっていますので、夏にお腹を出すと冬より余計にお腹が冷えて、体調が悪化していまいます。
冬は気温と体温との差が大きいので、エネルギーをたくさん消費します。そのためたくさん食べても大丈夫です。
反対に、夏は、気温と温度差が小さいので、エネルギーが消費されにくく、食欲がなくなります(たくさん食べる必要がないです)。
ただ冷房の環境下に入ると、熱を奪われるため、食欲が急にでてきてたくさん食べることができてしまいます。すると体が熱を作り、火照って寝苦しくなります。
寝るまえに、たくさん食べたり、冷たい物を摂取したりすることは控えてください。快眠するために、夕食は早めの時間に温かい消化のいいものをゆっくり摂ってください。
夏に1番やっていけない食べ方の例は、肉を食べて元気になろうと思って焼き肉屋さんに行き、肉をもりもり食べながらビールを飲みすぎてしまうことです。
ビールでお腹が冷えてしまい、肉を消化するために消化管が疲れてしまい、むしろ元気がなくなってしまいます。夏に肉を食べたくなったときは、昼や早めの時間から食べはじめ、ビールは控えめにするとおいしく、体に負担が少なく、肉をいただくことができます。
アーユルヴェーダでのピッタ体質の方は特に気をつけてください。
もし、熱中症になってしまったら、すぐ病院へ行きましょう。
特に、意識がない人、水分が取れない人は大至急病院へ連れて行ってください。
基本的に、どんな方でもベースの考え方は一緒です。そのうえで女性や冷えやすい方は羽織るものを持ち歩く、暑がりの方は熱がこもりやすい服装や食べ過ぎを控えるなど、自分の体質に合わせて対策をしていきましょう。
アーユルヴェーダ的にも、まずは自分の体で何が起こっているのかを知り、自分で自身の状態を判断できるようになりましょう。
【佐野正行医師 プロフィール】
佐野正行:医師・医療相談専門医 外科医として3000人以上の手術に携わる。 Webサイト:http://dr-masa.com/prof/ |
第三回目インタビューを終えて~アーユルノート編集部
まだまだ厳しい暑さが続いている今年の夏。連日のようにメディアでは熱中症対策について情報が流れていますね。
特に今年は新型コロナの流行により、春~初夏の時期をほとんどの人が自宅(屋内)で過ごすことが多く、体が夏の準備をできないまま猛暑の中を過ごしています。そのため、日常的なケアを必要としている方が多いのでは?!
また、夏から秋にかけての季節の変わり目は夏の疲れが出やすく、体調を崩してしまう方も多いです。佐野先生のお話を参考に体を整えて、普段から自分の体調は自分で管理・調整する習慣づくりを心掛けいきましょう。
2020.05.22
【教えて!佐野先生】アーユルヴェーダでやさしく心身(からだ)を整えよう Vol.2
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アーユルノート編集メンバーです。アーユルノートを通じ、多くの方と一緒にアーユルヴェーダについての学びを深め、アーユルヴェーダを実践中しています。メンバーは、アロマやメディカルハーブに造詣が深く、アロマ・ハーブについても発信しています。スタッフが実際に実践し、よかったこと・情報・簡単にできることを紹介します。
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