アーユルヴェーダには、病気にならないようにいくつもの予防医学が存在し、病気になってしまったときには、病気を改善させるさまざまな施術があります。今回は、アーユルヴェーダの予防医学の中でも大切にされている3つの柱についてご紹介します。
アーユルヴェーダの古典の中に記されている3つの柱は、「食事(アハラ)」と「睡眠(ニドラ)」と「禁欲・梵行(ブラフマチャリヤ)」になります。これらは、健康・幸福・調和の基礎となり、病気の原因を探っていくと、これらの不調和・不摂生が重なり合っていたことによると考えられます。
食事(アハラ)について
食事(アハラ)とは、アーユルヴェーダの3つの柱のひとつとなります。
生命の維持と健康の維持に最も不可欠な要素です。体は食物によって構成され、栄養を与えられ生命と病気の源となります。
適切な食事にはさまざまな効果があります。活力を与え、体力を支え強く丈夫にし、知性や記憶力や熱意を高め、細胞に栄養を行きわたらせ消化力や免疫力を高め、寿命を延ばします。食事をすることによって満足感、幸福、喜びを与えます。
食事(アハラ)について今回は、食事に関する考慮すべき8項目をご紹介していきます。
- 食品の性質
- 食品の調理法や加工について
- 食品の組み合わせ
- 量
- 食品の産地
- 季節と食事の時間
- 食事の規則
- 食べる人の順応性
食事については食品の栄養素に注目しがちですが、今回ご紹介した8項目についても参考にしてみてください。私たちが毎日、何を、どのように、食事をするかということは、健康の維持や回復に力を与えることになります。
また、スリランカでは、食事のまえに祈りをする光景を目にします。日本では、食前にはいただきます、食後にはごちそうさま、というすべてに感謝をするという風習がありますね。そのように感謝する習慣を大切にすると、さらに良質な食事の時間をお楽しみいただけるでしょう。
睡眠(二ドラ)について
睡眠は、健康のために不可欠となり十分な睡眠時間を持てないと、心身のエネルギーが失われ活力が生まれません。
質の高い睡眠は、心身を若返らせ活動している時間にエネルギッシュな活動を行うことができます。現代は、生産性を重視したライフスタイルの変容によって、世界中の成人の3人に1人が不眠症の症状に苦しんでいると推定されています。不眠症に苦しむ人は、神経性疾患による痛みや胃にも負担がかかるリスクもあるなど、個人の生活の質にさまざまな悪影響を与えます。自身の体力や精神力を過信することなく、十分な睡眠時間を確保し睡眠を充実させてください。
各体質によって睡眠の取り方が異なるため、目安として下記を参考にしてください。
ヴァータタイプ
- 就寝時間:22:00より前
- 睡眠時間:4~7時間
- 寝姿:仰向け(月と太陽のエネルギーのバランスをとります)
ピッタタイプ
- 就寝時間:22:00~23:00
- 睡眠時間:5~8時間
- 寝姿:右下(月のエネルギーを吸収)
カパタイプ
- 就寝時間:22:00~23:30
- 睡眠時間:8時間 寝すぎるとうつ病の兆候がでる可能性がある
- 寝姿:左下(太陽のエネルギーを吸収)
【注意事項】
既往症のある方・妊婦・子ども・高齢者は例外となります。
アーユルヴェーダでは、一般的に左下(横向きで左側を下にする姿勢)で寝ることを推奨し、また深い眠りを得るために南枕で寝ることをすすめています。
よい睡眠を得るための行為
- 就寝3時間前に食事を終え、アルコールやカフェインを控える。
- 電子機器を就寝時にそばに置かない。
- 入浴をして体を温め、香りなども含めリラックスをする。
- 鼻呼吸を意識しておこなう。
(目を閉じて右の鼻孔を閉じ、左から空気を吸い込みます。つぎに左の鼻孔を閉じ、右から空気を吐き出します。右の鼻孔から空気を吸い込み右を閉じて、左から吐き出します。この動作を繰り返し10分程続けてみてください。) - 一日の出来事を振り返り、すべてに感謝する習慣を持つこと。
- 昼寝をしない。
- 日中運動を行う。
- 瞑想を行う。
- 上記を行いそれでも思考が頭に浮かぶ場合は、紙に書いてその思考を手放す。
アーユルヴェダ的な寝姿による性格診断
胎児型:この寝姿の方は、外見がタフで内面がソフトであることを意味します。
仰向け型:まじめで自分にも他人にも規律を守る人。静かで控えめな性格を示します。
側面上型:横向きの寝姿の方は、つき合いやすい性格を持ち、愛する人や物を保護することを示します。
仰向けで手をあげた型:友人を優先し、大切な人のためにできる限りのことを行います。幸せで氣楽な氣質を示します。
うつ伏せ型:恐れを知らず、周りの世界にストレスをかけません。時々衝動的かもしれませんが自然に主導権をリーダータイプであることを示します。
※寝姿は就寝時に動いて変化しますが、一番落ち着いて心地よい寝姿で判断してみてください。
禁欲・梵行(ブラフマチャリヤ)について
ブラフマチャリヤとは「生涯独身を貫くこと」と説かれていましたが、現代風に考えると自身のエネルギーの無駄づかいをせずに、自分のすべきことを大切にするというような意味を持ちます。
ブラフマチャリヤは、私たちのエネルギーを外部のエネルギーから遠ざけるという感覚を呼び起こし、私たち自身の中に平和と幸福を見つけることにエネルギーを向けます。あなたのエネルギーが最も向けられている瞬間を振り返ってみましょう。
普段あなたの意識は、日々の心配事や他の人のことに大半を占めてはないでしょうか?私たちのエネルギーの多くは、他の人を喜ばせたり、他の人に自分を印象づけたりするために、自分を自分でない誰かとして表現しようとしていることが多いように思います。自分に負荷を感じない範囲で自分自身で調整がとれるのであれば支障はきたさないでしょうが、気づかないうちにそれらがストレスとなっているかも知れません。そうなると、心身に影響を及ぼし不調和を生み出してしまい、病気へと発展しかねません。
あなたの体の声に耳を傾け、エネルギーがどのように使われているのかを考え、調整してみてください。そして、ときにはスローダウンして体と心に必要な休憩を与えてあげてみてください。
健康と幸福と調和な日々のために
「食事・睡眠・禁欲(または梵行)」の3つの行為は、誰もが毎日繰り返し行っています。体や心に不調和を抱えている多くの方の根本的な原因はここにあるとアーユルヴェーダは教えています。
日々の食事・良質な睡眠・エネルギーバランスを保つ3つの生命の基本を大切にお過ごしください。
アーユルヴェーダスクール『AYUWEDA』代表取締役
2008年アーユルヴェーダを学ぶ為にスリランカに単身留学。帰国後2009年〜2018年まで在大阪スリランカ名誉総領事秘書と兼任しながらアーユルヴェーダの普及活動に務める。
イベント企画、運営、開催、講師、その他多数メディアにて講師、執筆を行う。
BODYPIT KYOTOにてアーユルヴェーダの施術を行っている。
2mathematics