11月に入り、秋の涼しさから肌寒さを感じるようになりました。
自然界では草木が黄色や赤に色づいてその枝葉を落としていき、冬を迎える準備をしています。
私たち人間の体も同じように、この時期には冬支度をしてくことが必要です。本格的な寒さがやってくるまえに、暮らしや食事を気をつけることで、冬に出やすい不調を緩和させ、寒い季節も健やかに過ごすことができます。
アーユルヴェーダの季節との付き合い方
アーユルヴェーダでは、「リトゥチャリヤ」という季節に応じた過ごし方を大切にしています。「リトゥ」とは季節のことで、季節や気象条件によって土地、水、植物、動物、人間などすべてのものに影響を与えています。季節による環境変化や食物は、ドーシャに与える影響が最も強い因子といわれており、私たちの心身に大きく関わっています。
ここで、秋という季節をアーユルヴェーダ的に捉えてみましょう。
空が澄んで高くなり、太陽光線は未だ強く感じるけれど、陽が傾き、月が出てくるとその光でスーッと冷やされていく。空気の乾燥とともに植物たちも乾燥し、稲穂も輝く黄金色から枯れ色へと変化します。
乾燥、冷え、変化これらは、ヴァータドーシャの性質になります。
私たちの体に疲れが出たり、風邪をひいたり、便秘になったり、体のあちこちに凝りや痛みを感じるのは、ヴァータドーシャの表われです。これからますますヴァータドーシャが増える季節になるので、今のうちからしっかりとケアしていくことが大切です。
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秋はヴァータのが乱れると心もセンチメンタルに
陽が短くなり、肌寒くなる秋は、何だか物哀しく感傷的になる気がしませんか。
日照時間が短くなると「セロトニン」(幸せホルモン)という脳内物質の生産が少なくなり、気持ちが不安定になりやすくなります。「切ない」「寂しい」「不安」というような感情はヴァータドーシャの乱れが影響しているためで、ヴァータを鎮めることで緩和され、バランスを取り戻すことができます。
特に、大人の女性のほうが秋に切なさや寂しさを感じやすいのは、女性は男性や子どもよりヴァータの性質を多く持っているという特性からです。
アーユルヴェーダ 秋から冬の過ごし方
秋から冬へ移行するこの季節はヴァータドーシャの乱れに気をつけましょう。
冷えないように、暖かい服装を纏い、太陽を浴び、規則的に体を動かして体内に熱を与えましょう。
お風呂は熱すぎないお湯にゆっくりと入って心身を温め、陽に干した暖かい布団で気持ちよく睡眠をとり、一日の疲れを癒しましょう。
乾燥は、皮膚や髪、内臓や声にも表れます。暖かい水分(体がホッと温まる温度)と油分を与えてあげましょう。太白ごま油を使ったオイルマッサージはとても効果的です。
秋から冬の食事法3つのポイント
①温かく、水分と油分のある食べ物をとる
油分のある油揚げやお肉などを入れた具沢山のスープや煮込み料理、鍋料理がおすすめです。具沢山にすることで、さまざまな栄養素をとることができ、効率的に代謝することを促します。
②甘味、酸味、塩味を意識する
アーユルヴェーダの食事法では、6つの味を一度の食事で味わうことを教えています。6つの味とは、「甘味、塩味、酸味、辛味、苦味、渋味」です。ヴァータを増やす味は苦味、渋味、辛味であり、甘味、塩味、酸味はヴァータを鎮める味です。6つの味を整えたうえで、甘味、塩味、酸味を意識しましょう。
③適切な時間に適切な量をとる
食事時間や食べる量がバラバラなのは、不規則性のヴァータを乱すことにつながります。適切な量とは、つぎの食事までに空腹を感じる量です。たとえば、昼食を食べる量は、夕食までに消化が終わりお腹が空く量ということです。
消化力は、一日の時間変動のなかでも変化しますし、体調、メンタルの状態でも変わります。常に自分を客観的に観察してみましょう。
アーユルヴェーダ秋~冬におすすめの食材
・秋~冬におすすめの食材①「ギー」
アーユルヴェーダでは最良の油と讃えられており、無数の使い方があるといわれています。普段の油をギーに替えてみたり、ホットミルクやコーヒーなどにギーを小さじ1杯加えて飲むなどして取り入れてみましょう。
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・秋~冬におすすめの食材②「南瓜(かぼちゃ)」
夏に収穫された南瓜がだんだんと糖分が増してきます。南瓜は火の通りも早いですし、味も甘いので、日々忙しく過ごしているヴァータに偏っている人にピッタリの食材です。綺麗なオレンジ色は見るだけでも元気になります。
・秋~冬におすすめの食材③「ナッツ類」
油分の多いナッツ類を間食や料理のアクセントに利用しましょう。ナッツは小さくてもエネルギー量や脂質、ビタミンやミネラルも多く含まれている素晴らしい滋養のある食材です。
ただし、食べすぎは禁物です。アーモンドは1日20粒程度といわれています。
アーユルヴェーダの秋~冬におすすめレシピ
南瓜の豆乳スープ
著者撮影
【材料】2人分
- ギー 小さじ1
- 玉ねぎ 50g(小半分)
- 南瓜 70g
- 水 50ml
- 無調整豆乳 200ml
- 塩 小さじ¼
- ブラックペッパー 少々
- ドライハーブ 少々
(パセリ、セージ、タイム、オレガノなど)
※作り方は下記または、動画でも紹介しています。
【作り方】
- 玉ねぎは薄くスライス、南瓜は1㎝角にカットする。
- 鍋にギーを入れて中火で熱し、玉ねぎを加えて透明感がでるまで炒める。
- 南瓜と水50mlと加えて混ぜる。蓋をして弱火で5分煮る。
- 南瓜が柔らかくなったら豆乳を加えてひと煮たちさせる。
- 塩、ブラックペッパーを加えて味を整える。
器に盛ってハーブをふりかける。
ヴァータの乱れは、体調やメンタルにも大きく影響をを及ぼしますが、正常に働いているとアイデアが湧いてきたり、快活に行動をすることができます。食事や暮らしの中でヴァータの乱れをコントロールし、秋から冬の季節を健やかに楽しく過ごしましょう。
参考資料:
VB.アタヴァレー著/稲村晃江訳(1987.7.20)『アーユルヴェーダ 日常と季節の過ごし方』平河出版社
上馬場和夫/西川眞知子著(2002.5.10)『インドの生命の化学アーユルヴェーダ』農山漁村文化協会
香取薫/佐藤真紀子著(2014.10.3)『アーユルヴェーダ食事法 理論とレシピ』径書房
デイビット・フローリー、ヴァサント・ラッド著/上馬場和夫訳(2000.5.1)『アーユルヴェーダのハーブ医学』出帆新社
管理栄養士。アーユルヴェーダ料理教室SpiceSpice主宰。バックパッカー時代、インドで体調を整えるスパイス料理に魅了され定期的に渡印。ホームステイにこだわり、心温かい家庭料理を習う。香りや味で料理をおいしくするスパイスのように、日常の暮らしを豊かにする、スパイスのような智慧と経験を味わう教室を目指している。
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