新型コロナウィルスに伴う活動自粛が落ち着いて、少しずつですが日常の活動が活発になってきました。新しい生活パターンに合わせてそれぞれのライフスタイルを考え直している方も多いと思います。
その中で、急な生活の変化や、人と接触するのがまだ怖いと感じている方々も、そうでない方々も、見えないストレスを抱えてしまっていませんか。
肉体的にも疲れが溜まっている方も多い最近。いつもみたいに気軽にマッサージに行くのを遠慮したほうがいいのかな、と迷うときは、自宅でできる簡単なセルフマッサージや、家族とペアになってできるケア方法を知っていると安心です。
今回は、インドに昔から伝わる、手を使わず足を使って行うトリートメント「ウリチル」の方法をご自宅でも簡単にできるようアレンジしてご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
南インドに伝わる「ウリチル」とは
ウリチルとは、南インドに伝わる足で圧をかけ行うマッサージ(トリートメント)のようなものをいいます。
マッサージといえば、指や手のひらを使って揉んだり指圧したり、ほぐしたりする方法を思い浮かべますよね。マッサージは手で行うものというイメージがあるのですが、足で行う施術方法があるのを知っていますか?
手わざだけではなく、足の裏で体を踏んで行うものです。中国や日本でも古くからある技法のひとつですが、インドでも古くから伝わる足圧の施術方法があります。
南インドに伝わる武術「カラリヤパヤット」にある、足だけで行う全身のオイルトリートメント「ウリチル」いう施術です。
このトリートメントは、アーユルヴェーダの教えに基づくエネルギーのポイント「マルマ」を重要視して施術されます。マルマとは、鍼灸療法などで重視される「ツボ」の理論に似ているものです。
マルマは全身のエネルギーの流れのバランスを取るのに大切なポイントとなっており、ウリチルはマルマを刺激しながらエネルギーのバランスを整えていくトリートメント方法です。
このウリチルでは、施術される側の体中にオイルを塗り、施術者が足で圧をかけながら施術するので、施術側も柔軟性やバランス感覚を養うことができます。そのとき施術者は滑らないように、天井から吊るされた紐(ひも)を掴んで行います。
そのほか、ウリチルの特徴は以下のとおりです。
ウリチルの特徴~手を使うより楽にできる
手を使って体を揉んだりすると力もいり、手や指を痛めてしまう場合もあります。また、大きな体格の男性を女性の力で揉んだり、ほぐしたり、圧をかけるときも、力が足りずお互いに不満がたまることもあるかもしれません。
ですが、足を使えば、自重利用しながら圧をかけていくので、力のない方でもとても楽ちんです。小さなお子さんでも行うことができます。
ヨガと相性のよいウリチル
筆者のヨガ教室でも、レッスンの終わりにインド式マッサージウリチルやセルフマッサージのようなものを取り入れています。ただし、ここではオイルを使わない方法で簡単なものを生徒さんと楽しみながら行っています。
足を使う足圧トリートメントは、大きな筋肉をほぐすのに最適です。太ももや、お尻、肩甲骨周り、胸周り、そして触るのに気を使う足裏など、手では力が足りない大きな筋肉をほぐすことも比較的簡単にでき、誰にでも行いやすい方法です。
ウリチルには、巡り改善と高いリラクゼーション効果も!
足を使って体を踏むこのトリートメントは、オイルを使わずにもできます。筋肉をほぐし圧をかけるので、体の巡りをよくします。また、全身の疲労感や痛みの緩和も期待でき、リラクゼーション効果も高いです。
では、実際にご自分でもやってみましょう。
足と腕を使ったセルフマッサージ
著者撮影
それでは実際に行ってみましょう。まずは、自分でできる方法で行うため軽く腕も使って行きます。ここでご紹介するのは、ウリチルの施術法に合わせて、力のいらない腕を使った自重ケアを組み合わせたものです。
足や腕を使った施術は、手や指で行う方法とは違い、自分ひとりでも自重を使って十分な圧を加えられ、疲れません。リラックスしながら身を委ねるつもりでご自分をケアしてみてください。
ポイントは呼吸と合わせることです。吐く息で圧をかけ、吸う息でゆっくりと力を抜くことを繰り返しながら行います。
ウリチルを組み合わせたセルフケアのやり方
1. 床に座ります。
2. 両ひざを曲げて左脚を倒します。
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3. 左足の裏を右のかかとで踏んでいきます。
4. 土踏まずを満遍なく丁寧にかかとでほぐしながら、全体を踏んで圧をかけていきましょう。
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5. 足の裏が終わったら、上体を少し後ろに倒し、両手をお尻の後ろにおろして支えます。
6. 左のすねのきわをかかとで下から上へと押して圧をかけていきましょう。凝っているところは念入りに行います。3周ほど繰り返します。
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7. 続いて、ひじから手首までの腕を使って、太ももの内側を押しながら圧をかけます。
8. ひざの上部あたりから、脚の付け根に向かって体重をかけていきましょう。3周ほど繰り返します。
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9. 左のひざを軽く曲げて脚を立て、太ももの前側も同様に腕で押しながら圧をかけていきましょう。3周ほど繰り返します。
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10. 最後は太ももの外側です。ひじを使って骨のキワをグリグリとほぐすようにして3周ほど繰り返します。
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11. 反対側も同様に行います。
痛みを感じる部分は力を抜き、気持ちいいと感じる部分はじわっと圧を長めにかけ、重点的に行いましょう。
ペアで行う足圧トリートメント
続いて、ペアで行う足圧トリートメント「ウリチル」も試してみましょう。一生懸命力を入れる必要がないので、小さなお子さんにやってもらうこともできます。親子、夫婦、家族間のコミュニケーションとして活用するのもおすすめです。
ペアでのやり方
1. 受け手側は横向きに寝ます。(写真は右を下にする)左ひざを曲げて脚を前に出します。
2. 右脚は伸ばしてリラックスしてもらいましょう。
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3. 施術側は受け手の後ろへ立ちます。
4. 右の太ももの内側を足の裏全体を使って踏み、圧をかけます。
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5. 息を吐きながら圧をかけ、息を吸いながらゆっくりと圧を緩め、呼吸のタイミングと合わせながら、ひざの上あたりまで移動していきましょう。3周ほど繰り返します。
6. 続いて、ひざ下からふくらはぎ、足首までを足の土踏まずを使い、圧をかけていきます。3周ほど繰り返します。
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7. 足の裏の土踏まずを、土踏まずを使って圧をかけます。順番に足の指やかかと、足の側面などを工夫して使いながら、足の裏全体をケアしていきます。
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8. つぎに、受けて側の前側へまわり、内すねのきわに圧をかけます。
9. 体重をかけすぎると痛いので、かかとを床においたまま体重のバランスを取りながら、土踏まずから上を使って踏んでいきます。
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10. 太ももの内側から前側も同様に行います。
11. すねから太ももまで上がったら、3周ほど繰り返します。
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12. 最後はお尻です。お尻の側面からかかとで斜め内側へ押し込むように圧をかけます。
13. 足の裏全体を使ってお尻の凝っているところを満遍なく圧をかけていきます。
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14. 反対側も同様に行っていきましょう。
ウリチルは、リラクゼーション効果も高く、コミュニケーションツールとしてもおすすめ!
マッサージに慣れていなかったり、むくみやハリが強いときは、軽く触れるだけでも痛みを感じてしまう場合があります。そんなときは、無理せず、軽く触れる程度にしながら足を使い揺らすようにして筋肉を緩めていきましょう。
まずは、毎日続けて行うことで、少しずつ足周りの血行も促され、心地よくなっていきます。心地いいとリラックス効果も高まり、心身ともに休めることができます。
今回ご紹介した方法をやってみて、はじめは痛く感じてしまうこともあるかもしれませんが、心地よく感じるようになってからは毎日行わなくても大丈夫です。週末のスペシャルケアとして行うのもokです。ご家族やカップルなどの、コミュニケーションツールとしてもぜひ活用していただき、楽しみながら行ってみてくださいね。
「マナヨガ」代表。20代の頃、ストレス過多で喘息が再発。心身の調和こそ健康だと痛感し、ヨガセラピーを学び始める。また姿勢と歩き方から改善し楽な体へと整える“マナメソッド”を発案。現在、名古屋、東京を行き来しながら本来の自分らしさを引き出すレッスンを行う。フルオーダーメイドで作る個人レッスンは、キャンセル待ちが出るほど定評がある。
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